2話
ウーウーウー。後ろからパトカーのサイレンの音がかすかに聞こえる。
数台のパトカーがバイクを追いかけて行ったようだが、一台は停車している匠の車に駆け寄る。
「どうしました?大丈夫ですか?」
窓を叩き匠に声を掛ける警察官。
「大丈夫ですか?怪我されてるんですか?」
匠は少しずつ意識を取り戻し、目を微かにあけた。
「あ すみません。大丈夫です。」
「そうですか。お怪我はないですか?
とりあえず、このまま運転は危ないかと。
車を寄せましょう。」
頭痛はだいぶ落ち着き、意識もしっかりしていたが、警察官からこのまま運転は無理ではないかと心配され、やむを得ず姉貴に来てもらう事になった。
「匠!大丈夫? また痛むの?」
血相を変えて姉貴がタクシーを降りて、駆け寄ってきた。
「あぁ大丈夫。ごめんな。呼び出しちゃって。
もー落ち着いたんだけど、お巡りさんが…。」
「当たり前じゃない!もーほんと。
事故起こさなくてほんとよかった。」
姉貴の目に薄ら涙が浮かんだ。
ごめん。姉貴。
姉貴はなんだかんだ言っていつも俺の味方をしてくれる。
俺の1番の理解者だ。
だからこそ、心配かけたくないんだけど。
「さっ。とにかく、帰ろ。
鍵貸して。」
「姉貴ーまじこすったりすんなよ。
まだこの車どっこも傷ないんだからさ。
匠はわざと意地悪に言った。
「失礼なっ!そんな下手くそじゃないわ。
ったく、まぁそーゆー事言えるなら大丈夫ね。
よかった。」
姉貴は優しく愛おしそうに俺を見て笑ってくれた。
時間が経って、落ち着いた沙耶は暖かいミルクティーを飲みながらスマホを見た。
もう、手は震えていない。
あのレストランでの距離くらいがあれば、むしろもっと話していたいくらいだった。
なぜ返事くれない?
もしかして、私なんかしたかな?
歯に青海苔?いやいや青海苔料理に入ってなかったし。
化粧ケバかった?
んー。どちらかというとナチュラルメイク。
会話がつまらなかった?
やっぱり緊張で顔おかしかったかな?
まさか…。
事故とかじゃないよね?
沙耶は色んな不安を身に纏って一夜を過ごした。