ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説   42.はじめるしかない

沙耶は部屋でひとり、ヒロと静かに向かいあっていた。

「なんで怒ってるの?」
写真盾のヒロは、変わらず笑っているはずなのに、沙耶にはいろんな表情に見えている。

「ヒロ…あの人、思い出したみたい…ママ、あなたの恨みを晴らすよ?見ててね。」

ヒロが微笑んだ気がして、ホッとした。沙耶は微笑みながら、泣いた。

何泣いてるのか。情緒不安定過ぎる。
頬をぺチッと叩いて大きく息を吐いて床に大の字に寝転がった。

ただ天井を見つめた。
不思議と何にも頭になかった。
空っぽだ。

匠がついに思い出したのに、沙耶の頭は空っぽだった。

目を瞑ると、匠が悲しそうに笑う。

そして、新しい記憶から順に、匠との風景が巻き戻って頭でスライドショーしている。

なんか、泣けてきた。

「好き過ぎる…。」

沙耶の正直な心の声が漏れた。

でも、だめだ。やらなきゃ。

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