ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 9.幕開け

ピコン

匠からのLINE

「おはよ。よく眠れた?」

「おはようございます。眠れ…なかったかな。」

ピコン

「実は……俺も。なんか…眠れなかった。」
「あーなんかじゃないな。 嬉しくて。」照れうさぎ。

「わたしも。」……と返ってくるのを期待したが、それは来なかった。

代わりに、さっき匠が送ったウサギが照れたスタンプが来た。

まぁ、良しとしよう。
匠は自分を慰めた。

沙耶の表情は、こんな甘いLINEとは裏腹に冷たく、怒りさえ感じる。
もちろん、片時も忘れたことはなかった。
結城との再会で、あの記憶が鮮明に蘇ったのだ。

「ヒロ、待ってて! あなたの恨みは絶対ママが晴らすから。」

匠は、こんな沙耶の表情を想像できるはずもなく、沙耶との幸せな時間をただ素直に喜んでいた。

復讐の幕開けとも知らずに……。

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