沙耶は部屋でひとり、ヒロと静かに向かいあっていた。
「なんで怒ってるの?」
写真盾のヒロは、変わらず笑っているはずなのに、沙耶にはいろんな表情に見えている。
「ヒロ…あの人、思い出したみたい…ママ、あなたの恨みを晴らすよ?見ててね。」
ヒロが微笑んだ気がして、ホッとした。沙耶は微笑みながら、泣いた。
何泣いてるのか。情緒不安定過ぎる。
頬をぺチッと叩いて大きく息を吐いて床に大の字に寝転がった。
ただ天井を見つめた。
不思議と何にも頭になかった。
空っぽだ。
匠がついに思い出したのに、沙耶の頭は空っぽだった。
目を瞑ると、匠が悲しそうに笑う。
そして、新しい記憶から順に、匠との風景が巻き戻って頭でスライドショーしている。
なんか、泣けてきた。
「好き過ぎる…。」
沙耶の正直な心の声が漏れた。
でも、だめだ。やらなきゃ。