プチ小説

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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 22.記憶

「記憶は戻ってないようだな。」父親は匠の様子からそう察して安心した。 書斎の窓から吹き抜けの下のリビングに見える匠の姿を見下ろしながら、あの日を思い出した。 あの日……天気の良い昼下がりの警視総監室。特に大きな事件もなく、静か...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 21.約束

沙耶は匠の家から一度も止まらずに走った。怒りと、何故か涙が出てきて止まらない。だから、余計息が苦しくて、ゼイゼイ言いながらとにかく走った。 ヒロは、ヒロはもういないのに。なんであいつらは……何の罰も、痛みも何一つ受けずに生きてる? ...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 20.曲がった愛情

事故の電話を、受けた沙耶は「大丈夫だから。」なんて言う匠の言葉なんて耳に入るわけもなく、1時間あれこれ考えたあげく、匠の家に向かっていた。 「ってか、自分が事故したのになんで私に大丈夫?って言うの?」 電話口での匠はいつもに増...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 19.父親

「あ、もしもし?沙耶? 夜迎えに行くから。 うん。また出る時連絡するな!」 今夜はバスケの試合を観に行く約束をしている。 勤務終了時間が待ち遠しかったが、夕方からやけに忙しくて、あっという間に約束の20分前。 「やばっ!...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 18.気持ちの天秤

ピピピピッピピピピッ アラームの音で、目が覚めた。 見上げるとそこには、寝息を立てる匠がいる。 スースー気持ちよさそうな寝息と、安らかな寝顔に沙耶の顔がほころぶ。と同時に昨晩のことを思い出して、顔がみるみる赤くなった。 ...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 17.体温

『もう帰るとこ。店のうまいやつ、お土産にしたから持ってっていー?』匠は杏との食事を早くあっという間に切り上げて、すでに沙耶の部屋へ足を向けていた。 LINEは、既読にならない。 『もー寝た? でもまだ8時だよな?さすがに寝ない...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 16.罪悪感

1話 匠の胸の中で久々に感じた安心感は、後になって罪悪感に変わった。なんでここで、ほっとしてる? ヒロをわたしから奪ったのは匠。辛いのは匠のせい……なのに。 沙耶は頭を揺さぶった。 今日は朝から吐き気がする程の偏頭...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 15.看病

「あーなんか寒気がするんだよなー。」 「匠大丈夫?顔赤いよ?」 杏は匠の顔を覗き込んで、ほっぺたを触った。「ほら!熱いよ。絶対熱あるって!」そう言いながら、今度は両手で匠のほっぺたを触ってグッと顔を引き寄せ、自分のおでこで熱を...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 14.少年

翌日、沙耶は仕事帰りに匠の病院に向かった。 「沙耶ー。会いたい。」昨日の匠の言葉に胸が鳴った自分に罪悪感があった。 ごめん。ヒロ。 心は行く事をためらっているが、足は病院へ向かっていた。これは、計画を実行しているだけ。た...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 13.慰め

「もしもし?沙耶? 今日何してる??」 亜紀からのお誘いの電話だ。 いつもの、彼氏の愚痴を聞かせる為だろう。 「あーごめん。ちょっと体調悪くて。 大丈夫大丈夫。ただの風邪だから。寝れば治る。 また誘って。」 とても...
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