ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 31.罪

匠は、昔よく連んでいたかつては友達だと思っていたやつらに会うために、ひたすら街中を探してまわった。

「ちきしょー。なんで誰も居場所がわかんねーんだ?」

俺が誰かを殺めた?なんだそれ?
何がどーなってるんだ?

たしかに、「あの日」何かあったのはわかる。
目覚めたら病院にいて、骨が折れてた。
身体中痛かったし、そもそも記憶がすっぽり無いなんて絶対におかしい。

それに、ずっと悩まされて続けたバイクの爆音から来る頭痛。発作。

関係が無いわけがないだろ。

「あいつらが揃いも揃って居なくなるのも明らかに不自然だろ。」

急に腹立だしくなって、声を上げた。

「何なんだよ。一体。誰か…ほんとのこと教えてくれよ。」

匠はやり場のない感情を堪えきれず、座り込んだアスファルトに拳を叩きつけた。

アスファルトが血と涙で滲んだ。

「何?何やってんの?」

あの後、アスファルトに大の字に寝転んで一体どの位の時間が経ったのか…。

辺りは薄暗く、ひっそりと静まり返っていた。

聞き覚えのある声で目を仕方なく開けた。

「ねー?何してるのか聞いてるんだけど。」

ん?沙耶? んなわけないか。こんなとこにいるわけないし。幻覚でも見えちゃうくらい好きか、俺。
笑。
匠は自分に笑った。

血が滲む拳をふとぬくもりが包んだ。
ぱっと顔を上げたそこには、幻じゃないらしい生身の沙耶がいた。

「何?アスファルトに喧嘩でも売ってるの?
 それともこの下に金銀財宝でも埋まってる?」

沙耶が少し呆れたように見るから、思わず笑ってしまった。

「本物だったか。」

なんか、前もこんなことあったよーな。

それで、たしか、抱きしめられたよーな。

「まったく。何してんだか。」
その声と一緒に、沙耶のいつもの香りが匠を包んだ。

あーすげー安心感。
かっこわりーなー俺。

匠はいつのまにか、話し始めていた。

「俺、記憶がすっぽり無い時間があるんだ。目が覚めたら、何日かの記憶がなくて。」

「そう…。それはいつくらいの話し?」
沙耶が心配そうに匠の肩を摩りながら聞く。

「もー5年くらい前になるかな。」
匠は遠い目で答えた。
「記憶がないって、こんなに恐怖を感じるんだな。」

「何かはあったのは確かなの?」

「え?」

今まであまり聞いたことが無い、沙耶の強い気持ち、どことなく攻撃的な声だったから、匠は少し驚いて聞き返した。

沙耶は顔を匠に見られない様に、またぎゅっと抱きしめた。

なんだろこの気持ちは。
ヒロに犯した罪を思い出して欲しいと願ったのに。
なんかわかんないけど、思い出していくのも怖い。

私は何に恐れてるの?

「あったけーなー。沙耶…。」

匠が沙耶に抱きついてそう言った。

心から安心しきった少し甘えた声に、どこか懐かしさを感じていると、沙耶のお腹がじわっと暖かくなった気がした。

「赤ちゃん、できたみたい。」

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