ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 13.慰め

「もしもし?沙耶? 今日何してる??」

亜紀からのお誘いの電話だ。

いつもの、彼氏の愚痴を聞かせる為だろう。

「あーごめん。ちょっと体調悪くて。
 大丈夫大丈夫。ただの風邪だから。寝れば治る。
 また誘って。」

とても、付き合ってあげられる気分じゃなかった。

通話を終えて、携帯の画面がホームに切り替わる瞬間、沙耶は目をつぶる。

LINEに赤いマーク、着いてる?

ショッピングモールでの少年の事故以来、匠から連絡はない。
LINEさえもこない。

「なにしてるんだろ?」

あの男の子の事も気になるし、やっぱり、匠のことも心配だ。
あの日の手術室の前での、匠の様子が鮮明に思い出される。

私、何心配してんの?

沙耶は自問自答した。

いや。気になるのは男の子の容体。

「よし。連絡してみよう。…………なんて?」
なんて言って連絡するか、これは難題だわ。

普通に? 元気? ……それは軽すぎるよね。
男の子は?…… 直球すぎるか。

ピコン。

夜中の病院の屋上で、匠の携帯が鳴った。

「大丈夫?」

ふふっ。匠はすこしだけ微笑んだ。
大丈夫……じゃないかも。

匠は心の中で呟いた。

ピコン。

ウサギがVサインのスタンプ。匠から届いた。

……。「これさ、大丈夫じゃないんだよね?多分。」
沙耶は気がつくと、匠に電話を掛けていた。

「もしもし。」
匠の声が少しかすれていた。

「あ、もしもし?」
掛けたはいいけど、何話すか考えてないじゃん!

「あ、あの。えっと……何 してるかなーと 思って……。
 何となく 電話しちゃった んだよね。……ごめん。」

……。匠は聞いてるのか?返答なし。

「あ、ごめんね。忙しいよね。ちょっと、気になって。
 ……じゃ、切るね。  
 んーでも、ちょっと声だけ聞かせて。大丈夫?」
あーしまった。やっぱり電話するんじゃなかった。

「はぁー。」
匠の大きなため息。

「声聞きたかった……。」

「え?」

「沙耶ー。会いたい。」

沙耶の胸はキューと音を立てて鼓動した。

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