プチ小説

ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説  35.視線

身体がふわふわして軽い割には、どんどん底へ落ちていく。 さっきまで眩しかった太陽の光が、次第に遠ざかる。 息苦しくて、手を地上へ向けて伸ばすのに容赦なく身体は水底へと引きずり込まれる。 水の中だ!苦しい。息ができない。 ...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 34.父親

常に静かで、目を動かす時でさえその音が響き聞こえてしまいそうな無音のこの父親の部屋で、こんなに耳を澄ましても父の鼓動は聞こえなかった。 匠の、「俺は誰を殺した?」には、少し動揺したようだが、数分しか経っていない今はすでにいつもの父に...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 33.責任

匠は沙耶を送って家に着くと、またあの男の言った言葉が頭に浮かんで、支配する。 「また、人殺めちゃうの?」 なんだよそれ。俺がいつ?誰を殺したって? 全く記憶にないが、匠にはぷっつり記憶が無い日があるのがたまらなく怖い。 ...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 32.小さな温もり

「え?」 「赤ちゃんができたみたいなんだ。」 沙耶は匠のまっすぐ向けられる視線を避けて、もう一度言った。 「ほんとに??」表情が急に驚くほど明るくなって、沙耶のお腹にそっと手を置いた。 「だからこんなにあったかいの...
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ながら料理〜肉団子とほうれん草の甘醤油炒め〜

正社員フルタイムで働く、家事育児も一人でこなすアラフォーの「ながら料理」です。帰宅して30分から1時間で「いっただきまーす!」を目指して。さぁ今日もLet's cook! 肉団子とほうれん草の甘醤油炒め フライパンに、ごま油を...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 31.罪

匠は、昔よく連んでいたかつては友達だと思っていたやつらに会うために、ひたすら街中を探してまわった。 「ちきしょー。なんで誰も居場所がわかんねーんだ?」 俺が誰かを殺めた?なんだそれ?何がどーなってるんだ? たしかに、「あ...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 30.報告

沙耶は匠にどう伝えるかシミュレーション中だった。きっとまだそこまで現実的な未来は考えていないはず。 もう少し時間をかけて、沙耶への想いを膨らめて、さらに時間をかけて家庭を築く未来を描いてもらう予定だった。 そうして沙耶と同じ苦...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 29.誰か

「捜査だ。署に戻る。」 ただそれだけ言って、父親は去った。匠は冷たくなった缶コーヒーをカチッと開けて、一気に飲み干した。  「なんなんだ?」 捜査?あんなお偉いさんが、直々に捜査? 匠はブツブツと独り言を呟きながら...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 28.記憶

匠は公園のベンチに座っていた。バイク……仲間……。  飛行機……。頭の中に霞んで浮かんでは消える情景。全体がぼやけてはっきりは見えないが、なんとなく分かる。  自分の記憶だ。沙耶と紅葉を見に行って発作が起きたあの日から、ずっと記憶の糸をた...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 27.判定

沙耶は部屋について、上着も脱がす手帳を勢いよく広げる。先月はいつ来た?いつも来ると記す月のマークが無い。まさか……。ですか?  沙耶はさっきまでの慌ただしさとは打って変わって、微動だにしない。部屋の中が静まり返っていて、窓の外のどこ...
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