ピピピピッピピピピッ
アラームの音で、目が覚めた。
見上げるとそこには、寝息を立てる匠がいる。
スースー気持ちよさそうな寝息と、安らかな寝顔に沙耶の顔がほころぶ。と同時に昨晩のことを思い出して、顔がみるみる赤くなった。
服、着ないと!
匠を起こさないように、そーっとベッドから抜け出そうとした瞬間、腕をぐいっとひっぱられてまた匠の胸元にポスっと収まってさしまった。
匠は意地悪そうな笑を浮かべて、「おはよ。」一言。
「起きちゃったの?」
沙耶は恥ずかしくて目をそらした。
「うん。起きた。起きたら沙耶がいるって……幸せ。」
「しかも裸だし。」
沙耶は匠の目を手で覆った。
「明るいから見ないでおくれまし……」
何故時代劇みたいな口調?
ますます恥ずかしい。
「いいじゃん。昨日たくさん見たし。」
「黙りなさい!」
「口塞がなきゃもっと恥ずかしいこと言うよ?」
目隠しされた匠が、自分の唇を指差す。
口封じをしろって事ね。
沙耶は目隠ししたまま、匠の顔に近づいていった。
あと15センチのところで、ピタっと止めた。
目の部分が見えないが、匠がニコッと微笑むのが分かった。
と思ったら沙耶は腰をすっと引き寄せられたので、とっさに目隠しをしていた手も匠の肩を掴んだ。
「やっぱ、顔見てちゅーしよ?」
瞬く間に匠に引き込まれてしまった。
沙耶の心の奥にまた、熱いものを感じた。
匠が帰った沙耶の部屋は、もちろん沙耶1人だったがいつもとは違った雰囲気な気がした。
沙耶の気持ちからだろうか。
いつもより少し温もりを感じる。
沙耶は、向こうの部屋のヒロの写真をじっとみつめた。
そして呟いた。
「あなたのために、愛されてるだけよ……。」
そう言って目をそらした。