プチ小説

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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説   42.はじめるしかない

沙耶は部屋でひとり、ヒロと静かに向かいあっていた。 「なんで怒ってるの?」写真盾のヒロは、変わらず笑っているはずなのに、沙耶にはいろんな表情に見えている。 「ヒロ…あの人、思い出したみたい…ママ、あなたの恨みを晴らすよ...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説  41.消えた灯

深夜1時。匠の携帯に病院から電話。 「まじかー。この時間の電話は緊急事態しかないよな、」 「もしもし。」 「すみません。こんな時間だから迷ったんですが。」 「ん?どーした?」 「…雄也くんが、先程」 雄...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説  40.気持ちの迷子

「あちゃー。」ホラー映画の特殊メイクのごとく腫れ上がった瞼を見て、沙耶は声を上げた。 「冷やして寝たら良かったー。」 一晩中匠と泣いた沙耶は、穏やかに微笑んだ。小さな命を失ってしまったこと。とても悲しい事だけど、あのまま忘れて...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説  39.悲しい伝達

はぁーっ。匠はため息に似た深呼吸を深くして、沙耶の病室へ向かった。 ほんとに忘れてるのか?それとも、受け入れられなくて忘れたふりをしてる? 沙耶の気持ちを考えると、病室へ向かう足も前に出る事をためらう。 どう伝えればいい...
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38.空白

匠は、主治医と沙耶の様子について話していた。 「外傷は足の擦り傷くらいだよ。手首がすこし気になったから調べたけど異常なし。」 「そうか。ありがとう。」 「…子供のことは、残念だったな。もう本人に話したのか?」 「い...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説  37.忘れたこと

窓からさす太陽の光が少し眩しく感じて、少しずつ目を開けた。なんとなく怖くて、なるべく動かないようにして辺りを見回した。 「ここはどこ?」 呟くと、ベッドの隅に顔を沈めていた匠が慌てて覗き込んできた。 「沙耶!目が覚めた?...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説  36.忘れた時間

沙耶は病院からの帰り道。夕暮れで真っ赤に染まった低めの空を背に、検診でもらったエコー写真を握りしめてトボトボ歩いていた。 「頭痛いなぁー。」 元々偏頭痛持ちだが、それとは違う痛みだった。 「色々考えすぎて、脳みそが沸騰し...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説  35.視線

身体がふわふわして軽い割には、どんどん底へ落ちていく。 さっきまで眩しかった太陽の光が、次第に遠ざかる。 息苦しくて、手を地上へ向けて伸ばすのに容赦なく身体は水底へと引きずり込まれる。 水の中だ!苦しい。息ができない。 ...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 34.父親

常に静かで、目を動かす時でさえその音が響き聞こえてしまいそうな無音のこの父親の部屋で、こんなに耳を澄ましても父の鼓動は聞こえなかった。 匠の、「俺は誰を殺した?」には、少し動揺したようだが、数分しか経っていない今はすでにいつもの父に...
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ちゃらんぽらんじゃなさそうなプチ小説 33.責任

匠は沙耶を送って家に着くと、またあの男の言った言葉が頭に浮かんで、支配する。 「また、人殺めちゃうの?」 なんだよそれ。俺がいつ?誰を殺したって? 全く記憶にないが、匠にはぷっつり記憶が無い日があるのがたまらなく怖い。 ...
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